インデックス>ホーム>コトノハTravel>2006/8/25〜26 大地の芸術祭(新潟・十日町市/津南町)
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2006/8/25〜26 大地の芸術祭 (新潟・十日町市/津南町)
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注1)各作品の感想をちょこちょこ書いてますが、あくまで芸術作品なんで見る人それぞれで変わってきます!
注2)「No.」とは作品に割り振られた2006年版のナンバーです。公式サイトやガイドブックとかと対照するときに見やすいです。
※画像はクリックすると大きくなります。
【出発、いきなりお腹いっぱい(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその1)】
8月25日、高速バスで降り立った六日町I.C.には強い日差しが降り注ぎます。高い建物も少ないので、街を囲む山々が遠く広く太陽の照り返しを受けて青々と輝いています。
大手がいっぱいだったので見つけて頼んだ地元のレンタカー屋が、インターまで迎えに来てくれました。スタッフも、ホント地元のおじちゃんおばちゃん。安くはないですが味があります。で、免許を持たないワシですので運転は全て同行の友人。逆に、方向音痴の友人のために、ワシがナビを勤めます。
この日の予定は、十日町エリアの北側の作品を巡って川西エリアに入り、宿泊は松代エリアの「芝峠温泉 雲海」。現時刻の11時から、宿到着予定は18時ということで、見たい作品の数を考えるとかなりの強行軍だったりします。
六日町を発ち、まずは十日町エリアの中心施設「越後妻有交流館キナーレ」へ。作品をみつつ、パスポートやエリアマップなどを所望します。
No.66 水景色/藤木隆明+工学院大学藤木研究室
中で子供たちが遊ぶイメージだとか。でも、置かれているのは中庭の水の上w
No.65 ボトルの中のメッセージ/ジョアナ・ヴァスコンセロス
夜には、ボトル一つ一つに灯りがともるそうです。
No.79 じょんのび幟プロジェクト/木沢和子
方言が書かれた幟です。街中にも↓のような感じで立ち並んでいます。
No.71 曳航機と滑空機/林剛人丸
トンボが飛行機を牽引しています。覗き窓からの一枚。
No.72 ウチの有名人−そうさく計画/新井厚子
「徹子の部屋」ふうのセット。ここに腰掛けて、
このように映像を撮影したようで、ビデオが延々流れてます。地元の子供たちが知っている「ウチの有名人」を徹子の部屋風に紹介。学校や塾の先生、近くのおじいちゃんなどが、子供にいろいろと質問されてタジタジしながらも答えているのが、牧歌的です。
No.73 サムシング・イン・ザ・エア/ヘルガ・グリフィス
うーん、ちょっとモダンさを狙いすぎたかも?
No.74 ヒゲ・プロジェクト/ゼロゼロエスエス(松岡武)
ヒゲヒゲ。老いも若きも男も女もヒゲを付けています。好きなヒゲを選んで自分で付けて写真も撮れます。ヒゲ部の方は是非。
他にも、
No.70 Cross Clothe KT/久保美沙登
着物からクマ出てきてました。
No.60 妻有の入口/ZING+DOTSU(ジング+ドウツ)
駐車場の車の位置決めをする白線にもアートしてました。派手!
などなど、この施設だけでもそこそこの数。とはいえ、ワシには「これ!」といった作品が少なく、その中でも面白かったのは「No.72 ウチの有名人−そうさく計画」でしょうか。やはり、地元の「人」が見えるものって、なんか面白く感じちゃいます。
<続く>
【うぶすなの家 陶芸の家(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその2)】
この大地の芸術祭は、十日町市と津南町、合計760平方キロメートルといった広大な土地で行われています。ちなみに現在の十日町市は、昨年4月に旧十日町市、川西町、中里村、松代町、松之山町の五市町村が合併したもので、故に大地の芸術祭では、古い行政区画の五市町村+津南との、六エリアに分けられています。
その十日町エリア。キナーレを出てまずは十日町市街地の作品を数点巡ります。折りしもこの日から8月の27日まで、十日町では「十日町おおまつり」というお祭りがあるらしく、街中は熱気と活気が二乗三乗に渦巻いています。
No.82 妻有の家/レアンドロ・エルリッヒ
落ちる? いやいや、種も仕掛けもあってしがみついているわけで、それは単純なものなのですが、ここまで大掛かりにやられると面白いですね。
No.80 ユキノミチ/千葉大学栗生明研究室(有志)
冬季は五ヶ月間に渡り豪雪に閉ざされる妻有地区。その雪を、稲藁を使って表現したようです。ちょっと大味すぎですが、稲の香りは嫌いじゃない。
市街地には他にも作品があるのですが、時間と興味の都合上、十日町北部エリアに移動することに。街中を車や自転車で走ったり歩いたりしていると、唐突に芸術作品が出てくるのも、また愉快な気持ちです。
下条駅近くを右折し、まずは神明水辺公園へ。相変わらずの晴れ渡る空が、緑や水のコントラストを際立たせます。
No.4 石の魚たち/萩野弘一
石を配して川を行く魚を表現、したのかな。んー、小生には難しい作品でした。
No.3 小さな家−聞き忘れのないように−/伊藤嘉朗
小屋から川向のさるすべりの木を眺めます。石室的空間はひんやりしてました。
No.2 バタフライパビリオン/ドミニク・ペロー
↑全景。能舞台です。前夜祭の公演も行われたとか。舞台に立って上を見上げると、
こんな感じで、鏡に写る舞台や水と、鏡の隙間から漏れる空の青とで、空間意識が不思議な違和感を感じます。
神明水辺公園からさらに奥、願入の集落方面に車を進めながら、道すがらの
No.5 田園の中の異国ing(OUTLAND)/芹川智一
No.6 テラ−青い花プロジェクト/矢島路絵
No.7 ねこつぐら、暗い穴/手塚愛子
No.8 極東の第九9代/フィロズ・マハムド
を鑑賞。んー、ワシにはどれもちょっとピンときませんでした。No.5は作品でありながら宿泊施設でもあるらしいです。
山道(といってももちろん舗装済)を分け入って、なんでこんなところに?という唐突さのイタ飯屋を通過しながら、願入集落へ。ここは幾つか見たいものが固まっています。まずは、
田んぼの中のあぜ道を分け入った先、急に広がる溜池に浮かぶ、
No.9 山中提 スパイラル・ワーク
大きなお盆の上に配された瓶の花。風が吹くと、お盆がささやかに水上を揺らめきます。その揺らぎを眺めていると、不思議と涼感を感じます。
No.9から数百メートル走ると、「うぶすなの家」と呼ばれる、今回のコンセプトのひとつである「空家プロジェクト」で再生された古民家が現れます。
ここには、9人の陶芸家の陶芸作品が置かれ、また地元の人たちが作る食事を楽しむことも出来ます。食事は、作品展示もされている陶器で提供される、まさに「用の美」を地でいく建物です。
No.13 こもる壺・はじける壺/澤清嗣
No.14 自然と生成−素材への畏怖/原憲司
No.15 土と色彩の旋律−空間の装い/中村卓夫 ↓写真
No.16 たゆたい、うつろいゆく形の美しさ/吉川水城 ↓写真
No.17 曙光−妻有焼の誕生/吉田明 ↓写真
No.18 玄界灘の交感−唐津/川上清美
No.19 白い風−光りの茶室/黒田泰蔵
No.20 緑色の太陽−闇の茶室/鈴木五郎 ↓写真
No.21 花の気配/福島光加
個人的に気に入ったのは、良い写真が撮れなかったですが、No.14。なんか、茶室がジオラマ的に作られていて、面白かったです。後はNo.16。漆黒の器に跳ねる草花の模様が、派手ではないのに鮮やかでした。
時間は13時半。ついでにと、ここ「うぶすなの家」で昼食も取ることに。平日ですが、前週にテレビで紹介されたらしく、そこそこの込み具合。
山菜ぎょうざ定食
おにぎり三種盛り
「餃子かよ!」と言われそうですが、これが美味い。他に一品料理で「妻有ポーク冷菜」も頼んだのですが、どれもとても美味しかったです。雰囲気のなせる業もあるかもしれませんが、それにしても、きちんと作りこんでいるんでしょうね。
うぶすなの家を出てからは、さらに願入を奥のほうに入って行きます。
No.12 胞衣 みしゃぐち/古郡弘
土壁に覆われた通路を歩いていくと、やはり土壁の建物内に入ります。その中心部には
一本の木が。深読みも出来ればスルーも出来る作品ですが、個人的には、少し深読みをしながら鑑賞していました。
No.10 蓮渡り−逸楽郷へ/松岡真澄
No.11 フロギストン/山本浩二
この二作品が入るのが、願入集落の「旧冬季分校」。
No.11は、友人によればそういう作家さんらしいのですが、炭化させた木々で様々な造形を並べています。↓写真
No.10は、非常に「哀しみ」を感じた作品でした。枯れ花を配したフロアの中心に屏風がひとつ。屏風の表側には「在りし日の明るさ」を思わせる明るい花の絵、しかしその裏には、フロア同様の枯れた花が描かれていました。
表
裏
この「旧冬季分校」の、階段部分に張られた絵のイメージも重なり、これまた深読みしてしまう作品でありました。
階段部分に張られた絵。この反対側には、黒電話が置かれ連絡網が張られていました。
続いて、川西エリアに向かいます。
<続く>
【光と、花と、水と、トマと。(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその3)】
回遊エリアを川西に移します。一日目はこの川西エリアのみたいところを回って投宿。既に、想定していたより1時間くらい遅れていて、自分の時間の読みの甘さに呆れます。
ま、そもそものんびりした里山で芸術作品を見るのに、時間に追われるタイムテーブルを立てるほうがおかしな話ですが。
下条から国道252号線を走り、まず見かけたのが、
No.99 境界の神話/内田繁
お彼岸のなすびみたいなものが並んでいましたが、ワシ的には、イマイチ伝わってくるものがありませんでした。
時間の都合で幾つかを飛ばし、川西エリアの大地の芸術祭中心地、ナカゴグリーンパークへ。まず向かうはやはり、
No.111 光の館/ジェームズ・タレル
……思ってたよりちっさ!
ここは、宿泊施設でもあり、建物の天井が開いて、空の移り行く色を見ながら夜が更けるのを見ることが出来、普段なかなか気付かない空の色の変化を楽しむことが出来ます。また、お風呂には光ファイバーが走っていて、なんか不思議な光の中で入浴できるとか。一昨年の震災でかなりの被害を受けましたが、真っ先に修復した人気の施設です。
ワシらは宿泊ではなく見学だけでしたが、係員のおばさまが天井を開けてくれるということで、畳に寝そべり、天を見上げます。
閉じてます
半分開いた
もう少し
ご開帳〜♪
や、青々とした空です。この空が夕暮れに近づくに連れ、天井の未開閉部分の色も黄金色になっていくんだとか。ここは、ただでさえ高台にあって景色も風の流れも心地いいところですので、今度、誰か一緒に行きましょう!
光の館を出て、坂を降りる途中にある、
No.108 絵画のための見晴らし小屋/母袋俊也
No.109 グリーン ヴィラ/たほ りつこ
を見学。No.108は、外では見えてた広大な風景が自動的にトリミングされて見える様が面白かったです。
続いて話題作(らしい)、野口集落は橘ライスセンターにある、
No.96 アース・ライス−大地の米−/塩澤徳子
米で世界地図を作っています。基本的に高い場所から見下ろし、中々緻密な作品に見えますが、実際に横に立ってみると、案外簡単に作っていることが分かります。もちろんそれでも、高低差を上手く見せるために大変な苦労があったと思いますが。ワシ的には、発想は面白いな、と思いつつも、作品としては「力業かな」と思わないでも無かったです。
むしろ強く印象に残ったのは、この作品の前に広がる稲田。間もなく収穫時期を迎えるであろう穂の緑と金の中間の色がまた美しいです。
山道を進みながら向かうのは小白倉集落。ここでは21人の生け花アーティストが、集落のあちらこちらで作品を競います。一日ひとりは、誰かが実際に生ける様を見られるのだとか。
No.128〜No.148 小白倉いけばな美術館
ただ、ここも時間が無く、常設している古民家を一件訪ねるのみ。それでもそこだけで10近い作品が飾られていて見学することが出来ました。
うーん、まぁ生け花が今やかなりフリースタイルなアートになっているのは知っていましたが、ここまで自由奔放だと気持ちいいですね。良し悪しは分かりませんが、「これが生け花である」ということが、小生にとって面白く感じました。
小白倉から大白倉へと車を走らせ、本日最後の目的地に選んでいたのが、
No.125 農閑期/木村育子
No.126 水物語の家/パウェル・ムルクス
同じ古民家の一階、二階でそれぞれ展開されています。
No.125は、農具を真っ白に表現し、真っ白なフロアに配しています。ワシには、その白がそのまま脱穀された米の白に見え、また深読みをしそうになります。
No.126は、地元の人たちがこの土地でいかに「水」と付き合ってきたかを、灌漑などの実利面と、伝承などの民族面と、両面からインタビューして構成された40分のフィルムを、古民家の壁に映し出しています。
これは面白かった。【No.72 ウチの有名人−そうさく計画】でも感じましたが、地元の人が出てきて、その「顔」が見える作品は、ワシは強く惹かれるようです。時間さえ許せば、40分丸々見ていたかったです。ただし、この古民家についたのはもう17時過ぎで17時30分には閉館、ということで、これまた中途で退出します。
こう、つくづく時間に追われる形のタイムテーブルを組んでいる自分に失笑です。ある意味で、目的のひとつを見失っているとしか思えない。
ボランティア(こへび隊)の女性に挨拶をして出ようとしたところに嬉しいサプライズ。近くの農家のおじさんが差し入れでプチトマトを持ってきてくれて、古民家隣の湧き水で冷やしているから、是非食べていってください!とのこと。こうして、地元の人と交流し根付いているっていうのは、このイベントの良い方の一面に過ぎませんが、それでも素晴らしいことだな、と思います。
で、このトマトが美味い! 今まで食べたことがあるトマトの中で、本当に、最も甘くて美味しかったです。形はいびつで、恐らく売り物にはならないものなのでしょうが、取れたて冷やして山の中で食べるトマトの美味しさに感動して、ついつい4個くらい食べちゃいました。冷やしている湧き水も美味しかった!
こへび隊の女性、農家のおじさんに礼を言い、山間の早い夕暮れが近づく中、車を宿に向けます。途中、トイレ休憩で寄った「道の駅瀬替えの郷せんだ」にも作品が飾られていて、そのひとつが、
No.124 明日に架ける橋のように/カアリア・カイコネン
道の駅の駐車場から林の奥に向かって、地元で集めた服で橋を作っています。感想は一言「壮観」。
松代エリアに入って、整備された山道を登って到着したのは、今夜の宿「芝峠温泉 雲海」。
露天風呂からの眺めが素晴らしい、ということですが、この日は着いてすぐ食事にしたので、それは楽しめず。
料理の種類が多いと嬉しいね♪
食事は、地のものも多用されていて、品数も豊富で中々美味しかったです。施設も全体綺麗ですし、ま、いわゆる温泉旅館ですから民宿的な素朴さには欠けるかもしれませんが、良い宿だと思います。
さて、ようやく初日の全行程終了……と思ったら大間違い。この宿の近く、蓬平にある、
No.210 ファウンド・ア・メンタル・コネクション3 全ての場所が世界の真ん中/マーリア・ヴィルッカラ
を見に、夜の帳も完全に落ちた集落をこっそり訪ねます。ちょうど、一週間くらい前に、大地の芸術祭総合ディレクター北川フラム氏のBlogで紹介されていて興味を覚えたのです。静まり返った集落の家々の軒下に、笠を使用した灯り(あかり)が燈り(ともり)オレンジ色の光を発しています。街灯と溶け合い不思議な色のコントラストを演出しています。
全然派手ではないのですが、北川氏が「大地の芸術祭の宝です」と書いた気持ちが、少し分かりました。
宿への帰路、街灯も何も無い場所で車を止めてもらい、ライトを消して車の外へ。
満天の星空。
大地の芸術祭の宝の後には、大空に散らばる宝を堪能して、この日はぐっすり休みました。
<続く>
【記憶。思い出。残るもの。(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその4)】
8月26日(土)。
前日22時代に寝てしまったせいか、目が覚めたのは午前5時。年寄り? ちょうど窓から外を眺めれば、宿の名前にもなっている「雲海」が広がっています。
昨年12月に高千穂で見たものには雄大さでかないませんが、それでも十分な美しさです。
二度寝して、朝風呂に行きますれば、昨夜日の暮れた後は分からなかった露天風呂からの遥かな眺めが楽しめます。
(風呂から撮ったわけじゃないですがほぼ同じアングル。下は盆地部分をアップ)
さて、朝食もいただき、早速今日も松代エリアから作品行脚。つか、ほんと、もうちょっとのんびり回ればいいのに……。
まずは宿のすぐ近くにある、
No.211 視点/フランシスコ・インファンテ
No.212 ジャック・イン・ザ・ボックスまつだいヴァージョン/江上計太
No.213 回廊…時の水脈/郷晃
を鑑賞。No.211は、カメラ台が置かれていて、作品(手前の板状のものが連なっている部分)の色と背景の景色の稜線が重なるらしいのですが、ワシの角度が悪かったか被らずorz。No.212は、ジャックと豆の木をモチーフにしたものでしょうか、ジャックは所詮何者かの籠の中にいた、的なメタファーを、勝手に感じます。No.213は、うーん……
車を走らせて向かいましたのは、仙納集落の、古い農作物の集荷所を再生利用した、
No.206 ライフ・ワーク+みどりの部屋プロジェクト/酒百宏一
一階は「ライフ・ワーク」として、様々な農具、家々に残された生活用具、木や葉っぱ、建物の壁や床を、色鉛筆を使って紙にトレシングし、書き写します。
二階は「みどりの部屋プロジェクト」。集落の人たちと協力して、やはり色鉛筆で葉っぱを写し、部屋中に貼っています。
写真の赤いところは隠し扉。開けると、ここだけ赤く色づいた葉っぱが見られる趣向です。
ちなみに、来場者も色鉛筆で写す作業を楽しめます。後で切り取って、一緒に貼ってくれるのだとか。
体験中
たまたま作者の方(若かった!)がいらしたのですが、説明をする地元のおじさんが(二つ上の写真)一生懸命に話してくれていて、意外に所在無げでした(笑)。おじさんが作者の方を「先生」と呼んでいたのが、なんか印象的です。
近くの田野倉集落の古民家を使って展示されているのが、
No.208 メモリー−田野倉プロジェクト/斎藤美奈子
何十年も前、この地に嫁いできたおばあちゃん達の辿った道を写真に収めながら、その気持ちをテキストボードにして展示しています。そして、屋根裏に昇ってみると
古めかしい人々の写真がバックライトに照らされています。
意図はいろいろあるのでしょうが、心を締め付けられるような衝撃があったのは確かです。
ところで。
松代エリアは、棚田の美しさでも有名で、まつだい観光協会のサイトには、撮影ポイントを記した棚田マップがあるほど。帰ってくるまでそれを知らなかったのですが、たまたま車を走らせていて見つけた美しい景色が、その中に書かれていました。
No.206への途上、仙納集落にて。
山を一気に降りて、松代エリアの中心地、農舞台へ。ワシがここにくるのは、ゼミラリーのときやふた月前のキャンドルナイトなどなどで、5回目くらい。ワシにとっての「大地の芸術祭」の中心的シンボルでもあります。
農舞台外観
期間中の土曜日、ということもあって、いつもにはない混雑ぶり。過去の作品でもあるレストランも、セルフサービス式になっています。まぁ、代表的なメニュー(地のものを使った「農の御前」や「野良仕事定食」)は変わりませんが。
と、ここで、この「大地の芸術祭」総合ディレクターである北川フラム氏に遭遇……したらしいです(何)。や、小生は気付かなかったのですが、友人が気付いたらしく。言われてそっちを振り返れば、何か、若者たちに案内をしていました。自らツアーの説明役をされているそうなので、その一環でしょうか。
農舞台内外の作品を見て回ります。この辺りは、恒久設置作品も多く、前回前々回のものも保管されていて、以下に紹介していないもの、写真に収めていないものもいっぱいあります。
No.251 花咲ける妻有
友人が作家のファンだそうで。いつきても、ビビットな色合いに驚きます。そして、作品に上らないで、と書かれているのに、子供たちが滑り台代わりにしおじいさんがそれを写真に収め……大らかですw
No.253 土の音−まつだい/渡辺泰幸
地元の人たちに作ってもらった思い思いの柄の焼き物を叩いて音を出します。
子供の作品でしょうか。
No.244 ライス・ルーム/ヴァンサン・デュ=ボア
中は暑かった(なんだその感想)
No.243 ワールド・エナジー・システム/岡部俊彦
大掛かりです。これも音を鳴らして楽しみます。しっちゃかめっちゃかっぷりは、むしろ味になっているかもしれません。
No.249 棚田/イリヤ&エミリア・カバコフ
ワシのもっとも好きな作品のひとつ。農舞台にある、農作業の模様を詠った詞から川向こうの棚田を見ると、その詞の節にあった人型が棚田に設置されていて、距離を置いたふたつのものがひとつの作品になっています。
展示場:空き家プロジェクトに関する説明
今回の芸術祭のテーマのひとつ、空き家プロジェクトについて展示、説明がされています。
No.??? 階段の下、踊り場をスクリーンにした映像作品
作品だとは思うのですが、番号とか見つからず。でも、この見せ方は面白かったです。流れている映像は、環境映像的で単調ですが。
No.236 関係−黒板の教室/河口龍夫
子供たちも多いこの日、落書きだらけで活気がありました。
No.??? 屋上の、金属円板と針金で、参加者が作っていける作品
これも作品番号分からず。これまた大味な作品です。
No.250 かまぼこ型倉庫プロジェクト/小沢剛
豪雪地帯特有の形をもった越後妻有エリアの「かまぼこ型倉庫」。中に、地域の歴史とかを展示しています。
この先、買えそうな場所も無いので、農舞台でお土産を買っていくことに。実は、このお土産屋内も作品なんです。
No.238 くむ・めぐる・いとなむ/牛島達治
……って、写真からは分からないですが、天井にレールが敷かれていて、お土産の置かれたディスプレイ台がぶら下がり、それが店内を動くんです!……この日は大混雑なので、動いていませんでしたが。
続いて、農舞台の裏山、松代城山を巡ります。
<続く>
【脱皮する日芸生(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその5)】
松代エリア、農舞台を出て、まずはそのすぐ裏手にある、
No.270 西洋料理店 山猫軒/白井美穂
宮沢賢治の童話「注文の多い料理店」を再現したような作品です。まぁ、あっけないですが。
松代城山には多くの作品が密集していますが、山道でもあるので、歩きで全部見ようとすると数時間はかかります……というか、ふた月前(会期前)に来て恒久設置作品を見た時は、歩いて回って、それくらいかかりました。車で回ると、作品の側に路駐なので、脱輪や追突にお気をつけください(誰?)。
No.258 水のプール/立木泉
こないだは苔が生してたのに!かはり会期中は綺麗になっているようです。つか、花を添えて完成なことを知りましたw(会期外は花は無い)。
No.278 WD スパイラル・パートVマジック・シアター/ハーマン・マイヤー・ノイシュタット
会期外は閉められている扉が開いていたので、中に入ってみました。……まぁ、ワシには意図の読めない作品です。
No.276 棚守る竜神の御座/國安孝昌
形変わってるーーー!第二回のあと恒久設置されていた作品ですが、今回の第三回にあわせてグレードアップしたようです。もっと平べったかったのですが、縦にでかくなりましたね。
No.277 フィヒテ(唐槍)/トビアス・レーベルガー
木々を分け入った小道の先に、図書館(本棚)があります。ワシのもっとも好きな作品(コンセプトが)のひとつ。ここの本棚は、会期外でも昼間は鍵が開いていて、読むことが出来ます。
No.279 かかしの嫁入り/深川資料館通り商店街協同組合+QrrART白濱万亀
東京の下町、深川で毎年行われてきた「かかしコンクール」の作品が、ここ妻有に登場、だそうです。面白いコラボだと思いますわ。
さらに幾つかを車窓に追いながら、車は松代城山を抜け出して西方へ。その道すがらにも作品が点在。本当に、広いエリアに多くの作品があるな、と感じます。
目的地の作品も人気があるらしく、作品近くの駐車スペースには止められず。ちょっと先に行き過ぎて、偶然にも素晴らしい棚田を見かけたり(松代・峠集落)、
結局車を止められたNo.291の駐車場から坂を登りながら、味のある民家を見かけたりします。
まぁ、怪我の功名とでも言いますか、逆に言えば、そういう素晴らしい光景をあらゆるところに持っている土地なんだと思います。
さて、その目的地とは、峠集落にあります、
No.289 脱皮する家/日本大学芸術学部彫刻コース有志
家中の柱に、
壁にも、白壁にも、
天井にも、
もちろん床にも、
古民家のありとあらゆるところが、彫刻刀で彫られています。ちなみに、最後の写真の渦巻きの中心地が、最後に彫ったところだとか。上右写真は、入り口に飾られた一輪挿し。
ワシが日芸出身だから少し贔屓目があるかもしれませんが、なかなかに見ごたえがありました。指先が触れる壁の、足裏から感じる床の、彫り跡の感触が、確かに古民家を、古民家から「脱皮」させています。
まぁ、冷静に見れば、「芸術的」というよりはかなりの「力業」な作品ですが、その力業をやりきったところは素晴らしいな、と。なんか、ワシが力を注いできた「芸術祭」につながる心意気を、勝手に感じました。
ここもどうやら前週にテレビで紹介されたらしく、ひっきりなしに人が訪れていました。管理している係りに聞いてみたら、やはり日芸四年生。おっさんとしては、後輩の活躍が嬉しいところです。
日芸の作品がこの大地の芸術祭にお目見えしたのは、これが初めてのはず(参加アーティストに出身者はいるでしょうが)。他にも芸術系の学校が幾つか出ていますが、学生たちも、特に新潟以外の学校は製作や管理のために来るだけで大変でしょうが、これからも頑張って参加して欲しいです。
そして車を、本日の最終エリア、松之山へと向けます。
<つづく>
【芸術祭の最後に最後の教室(大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ2006 レポその6)】
二日目、8月26日も終盤です。脱皮する家から車を一路松之山エリアに走らせます。途中から、たまたま二年前のゼミラリーで使った道をちょうど折り返す形になり、田舎道なれどワシには馴染みのある道を行きます。
しこたま30分も走った先に到着したのが、ここも人気の、
No.320 夢の家/マリーナ・アブラモヴィッチ
この写真は、その中にある「紫の部屋」。この、夢を見るための家では、特製のスーツ(背広じゃないですよ)を着て、夢を見るための四色の部屋の、まるで棺のような寝床に収まります。
それを体験するには宿泊をしなくてはならないですが、やはり期間中はかなり混雑の模様です。ま、この施設は「光の館」同様、見学だけでも面白いので、期間終了後もお出でになるようなら是非お立ち寄りを(見学時間注意)。
続いて隣にあります、
No.321 エリクシール/不老不死の薬/ジャネット・ローレンス
期間中は、こうして白衣の方がいて説明をしてくれるそうで、しかも試飲も出来るとのことです! そもそも何を展示してあるかというと、早い話が薬草酒。自然から採れたいろんな植物の欠片を漬け込んで、漢方薬のようにしています。実際、効果もあるらしいですが……さて。
ちなみに、ここも古民家を改造しているんですが、コンセプトは「ショット・バー」だそうで、それだけで面白いです。
さらにこれまた近くにある、
No.322 収穫の家/ローレン・バーコヴィッツ
No.323 米との対話/ロビン・バッケン
この古民家の一階が「No.322 収穫の家」
地元の草花、米、藁を使った造形物が立ち並びます。この写真は、米の絨毯の上に、器に盛った様々な農作物や木の実が浮かんでいます。ワシの好きな作品のひとつです。
二階部分が「No.323 米との対話」
光ファイバーを埋め込んだ畳が展示され、明滅します。どうやらその明滅はモールス信号で、小林一茶の句を詠んでいるらしいのですが、そんなの分かるかっ!w
夢の家からのこの4作は、松之山温泉からほど近い場所にあり(車は必要ですが)、恒久設置作品でもあるので、ちょっと温泉に来たついでに立ち寄ってみるのも面白いと思います。ワシは好きなエリアです。
さぁそして、二日間に渡る作品行脚もいよいよ最後。某所の越後妻有コミュでも、賛否は分かれつつも比較的評判の良かった、すなわち話題性の高かった作品、
No.329 最後の教室/クリスチャン・ボロタンスキー+ジャン・カルマン
この三階建ての、旧東山小学校校舎と体育館を使った、かなり大がかりな作品です。
まず入場した体育館の中は、
窓は閉め切られ天井から吊された電球が暗くオレンジ色に辺りを照らし、机におかれた扇風機が空気をかき回しています。
続いて、校舎の一階の廊下に出ると、
やはり電灯が薄暗く廊下を照らし、廊下の最奥部にはファンが回り、そのさらに奥に強力なハロゲンライトが廊下を照らしています。左右に飾られた写真立ては、全て黒く塗りつぶされています。
二階、理科室と書かれた部屋では、真っ暗な中に一定期間で明滅する薄暗い電球、そして心臓の鼓動を思われる低音が鳴り響きます。正直、ちょっと怖いです。廊下−教室に出ると、
白布を多用したディスプレイの中に、水のような、星のような、煌めく光が明滅します。
三階、音楽室と書かれた部屋に踏み入れると、
やはり薄暗い電球の周りに、黒く塗りつぶされた写真立て。今度こそ恐怖感から鳥肌が立ちました。ただこれは、作品に感銘したというよりは、小学校の頃に聞いた「音楽室の怪談」を連想させたからです。ちなみに音楽室の奥には、この廃校に残されていた子供たちの道具が、やはり暗い中に展示されています。
そして三階の廊下から教室にかけて、
棺を思わせるアクリルらしき透明の直方体の中に蛍光灯、そしてそれらを包む、死に装束を思わせる白布。
うん。
ボロタンスキーさん、これは狙いすぎでしょ。
ひとつひとつが大がかりで、意味深なんですけど、少し、あざとい気もします。とはいいつつも、体は鳥肌が立つほどの恐怖感を味わっているので、しっかり心に楔を打ち込まれてもいるのですが。
頭では「狙いすぎかなー」と思いつつ、体は正直に反応していた感じですかね。「感動」ではなく「恐怖」でしたが。
まぁ、これはここまで見に来て損はない作品だと思います。作品も広いですし、駐車スペースも混んでますので、いらっしゃる方は時間の余裕を持ってきてください(って、後二日ですが)。
出てきしな、入口/出口のところで、漏れ聞こえる会話からこの学校の出身らしい老人たちとすれ違いました。彼らは、母校のこの姿を見て、何を感じるのでしょうか。
さて、ワシ、友人ともに目的の作品は見終わりましたので、後は津南、中里エリアを通り抜けて六日町に戻るだけ……ですが、途中休憩で寄った中里エリアの「ミオンなかさと」で行ったトイレが、
No.194 河岸の燈籠/CLIP
……………………豪華なトイレなんです、これがまた。
さらに、途上近くにあった、慈眼寺に設置された作品、
No.199 フローティング・バンブー/中澤克巳
竹で編まれた遊歩道の柵が、宙空を走り縦横無尽に行き渡ります……んー、なんだったんだろう、結局。
なんか、結局「最後の教室」が最後の観覧作品じゃ無くなってますがw。
六日町に到着したのは、レンタカー屋の閉まる18時の5分前。相変わらずの綱渡りですが、まぁ、友人も長い運転にかなり疲れた様子で、友人と、無事に着いたことに感謝です。
高速バスの時間までに一時間ほどあったので、インター近くで昼食兼夕食(よく考えたらきちんと昼食を取ってなかった!)。レストランを探しながら先に見つけちゃったのが、
ドキドキハウス公開中
……「最後の教室」の続きですか? つか、ドキドキする家=欠陥住宅?w
で、結局入ったレストランが、六日町インターの目の前に傲然たる姿を鎮座在している「雪国まいたけ」直営の「レストラン雪国」。
きのこバター定食
キノコ料理が豊富でした(そらそーか)。意外にも、というと悪いですが、味は良かったです。
軽く飲んで、たらふく食べて、六日町I.C.から高速バスで一路池袋へ。体はかなり疲れておりましたので爆睡してましたが、見たもの、聞いたもの、触れたもの、嗅いだもの、味わったもの、そして感じたもの、それらを反芻しながらバスに揺られるのは、とっても心地よかったです。
栄養いっぱいの大地の芸術祭。残り会期は短いですが、下手なサプリを飲む前に一度足を伸ばされるのはいかがですか?
<おしまい>
▲コトノハTravel
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