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コトノハPersonalログ2001年8月

2001年8月4日 リメンバーパールハーバー
2001年8月7日 千と千尋の神頼み

2001年8月4日 リメンバーパールハーバー

 史実映画、ってのは、突込みどころが多いほど面白い。

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ミ
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  |      /__/ /  < なわけねえだろ!
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と言えるポイントが多い映画、それがパールハーバー。この夏、実はディズニーが贈っている(つっても、配給会社の大株主がディズニーってことなんだけどね)愛と友情の戦争映画。

 まぁ、この映画の歴史考証がいかにいい加減か、ってことは、公開前から散々言われていた。製作者も「これはエンタテインメントだから」とお茶を濁すほどだったのだが、脚本家か誰かが「これは史実に基づく映画だ!」などと抜かして、一部で顰蹙を買ったのも確かだ。

 まず、日本人の描写が笑える。パイロットが皆はちまきを付けて出撃するのは許そう。『お国のため!』と口にして覚悟をしていった若者もいっぱいいたと思う。でも、帝国海軍最高幹部は絶対に屋外の池(プール?)の側で、水面に船の模型を浮かべて戦術を語り合ったりはしないと思うし、その池の周りに『尊皇』とか『皇国』とかかれた懸垂幕をこれ見よがしに飾ったりしないと思います(笑)。アメリカ軍の軍議は室内で行われていたけど、日本軍だって同じだっての!

 あと、当時世界最高の運動性能を誇ったゼロ戦を、どんくさい米軍のしかも修理機二機で七機撃墜させた、それも、友軍がほぼゼロの状況で回りを敵機に囲まれて、ってのも・・・・・・。まぁ、一人で百を超える敵をなぎ倒して行った「コマンドー」のアーノルド・シュワルツネッガーのようなものなのかな。だとしたら、史実映画じゃなくて、痛快アクション映画やんっ!

 あとあとね、ルーズベルト大統領が真珠湾奇襲の通信文を受けとって、書類をふぁさ、と落とすシーンがあるけど、ルーズベルトが真珠湾攻撃を事前に知っていた、というより真珠湾攻撃自体が彼とアメリカによる一大謀略の一環であった、ってことは、まだ議論されていることとはいえ、アメリカ公文書館より出てきた資料によってほぼ事実とされている。本人が知っていた(やらせていた)奇襲(この時点で『奇襲』ではないか:笑)で驚くわけがないし、そもそもなんだそのベタな驚き方はっ!(笑)

 オマメ知識 〜真珠湾攻撃の史実〜

 真珠湾攻撃は、アメリカ軍によって引き起こされた。これはほぼ歴史の事実として認められつつある。
 当時、ドイツ、イタリアの枢軸国とロシア、イギリス、フランスを中心とした連合国の相対するヨーロッパ戦線は、日々拡大の一途を辿っていたが、そこから遠く離れたアメリカ国民の間には厭戦感が漂い、ヨーロッパ諸国の非難を買っていた。国民を戦争に駆り立てなくてはならなくなった時の大統領、フランクリン・ルーズベルトは、そのきっかけを国力の弱っていた日本に求めることとし、誰が見ても不平等な条文『ハル・ノート』を、「戦争を回避する為の最後通牒」として日本に付きつけた。
 独立国としての尊厳を犯された日本は、開戦を決意。それも、奇襲ではなく、宣戦布告をしてからの開戦のはずだったが、在米日本大使館が東京からの暗号の解読に手間取って戦闘開始に間に合わず、またそれを最大限に喧伝したアメリカ政府&メディアにより、真珠湾は世界戦史に残る『卑怯で不名誉な奇襲攻撃』として記録されることになる。また、真珠湾攻撃によるアメリカ世論の流れはルーズベルト大統領の期待通りとなり、アメリカは第二次世界大戦の渦中にその身を投げていくことになる。
 さらにその裏に、アメリカ最大の産業の一つである『兵器産業』の峻動があったという説もあるが、これは確認されている資料が無く陰謀論に属するものだろう。しかし、充分に考えられ得る話しではある。

 まぁ、はっきりいってラブストーリーだとか友情の物語とかは、あんまし面白く無かった。今時、昼のメロドラマでもやらないような恥ずかしい設定&進行&構成だしね。登場人物で一番感動したのは、黒人のコック(笑)。艦長の最後を看取るシーンや、機銃を持ってゼロ戦に立ち向かうシーンなんかは涙が滲みましたよ。。。タイタニックもそうだけど、こういう脇役みたいな人のほうが、よっぽど自然で良い演技をして、観客の涙を誘う。と、ワシは思う。

 というのも、ホントに主人公三人の愛と友情の物語に、全然感情移入できなかったんだよね。その原因は、設定&進行&構成の悪さ。要はシナリオの甘さが原因なんだけど、シーンもブツブツ切られていてテンポが悪く、登場人物の描写も甘く、なんでそうなるの?と思わされることしきり。あるいは、余りにもありがちな展開に、苦笑いしながら見ている場面もしきり。

 あと、真珠湾攻撃が終わった後、まぁ新たな展開で映画はもう一時間ほど続くんだけど、これまたなんとも「この映画、『パールハーバー』だよね?」と思ってしまう。二人の友情の決着を見るには必要な展開なのかも知れないけど、『蛇足!』と思ってしまったのは事実。

 まぁ、この映画最大の見所は、誰もがいう所だけど『プライベートライアン』の冒頭のノルマンディ上陸作戦の戦闘シーンが30分だったから、それを超えるために40分間に設定されたという真珠湾攻撃のシーンかな。これは迫力。というか、見てて、あまりの惨劇に震えてしまった。これは、日本軍が悪いとかアメリカが悪いとかそんなレベルを超えて、戦争なんてするもんじゃないって気持ちになる。ビバ!ラブ&ピース!!!

 というわけでこの映画、きちんと歴史を知った上で、突っ込みをかますには面白い作品かも。少なくともこの映画を見て、この映画に描かれていることが史実だと思い込まないように!はっきりいって、古い、既に覆されている歴史観で描かれているからね!

 蛇足:あれだけの戦闘のスペクタクルシーンを描けるのだから、それを使って是非、民間人に十万人単位の犠牲者を出した東京大空襲や二度の原爆落下を描いてほしいものです。>ハリウッド

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2001年8月7日 千と千尋の神頼み

 この夏最大の話題映画、千と千尋の神隠し。この映画最大のテーマは働かざるもの食うべからずだと信じて疑わないともさくですこんにちわ。

 宮崎駿監督は、もののけ姫を完成させたときに言った。もうこれで、映画を作るのは終わりにする、と。事実上の引退宣言だった。しかし、あっさりその言葉は覆された。。。

 いや、わかるんだよね。面白いこと思い付いて、これ作ろう!と思っちゃったら、過去に自分が何を言ってようが関係無く、過去の自分と矛盾していても関係無く、作りたくなっちゃう、やりたくなっちゃう。最近ではイギリスのギタリスト、エリック・クラプトンが今年限りで半引退と宣言してたけど、もしまたライブがやりたくなったら、アッサリ今の世界に戻ってくるんだろうな、と思う。そしてそれが出来るのは、彼らにはそれだけの才能があるから。

 そう、この千と千尋の神隠しは、もののけ姫ですべてを出し尽くした宮崎駿の、残り火とも残照とも言える部分で作られた作品だと思う。そして、それなのに充分に面白く、エンタテインメントしている作品に仕上がっている。もちろん宮崎駿は一生懸命作ったのだろうが (だから完成が試写会の数日前になったのだろうが) 、ワシには彼の才能の、いわば余分な部分で創られたような気がした。だのに!ものすごく上質な作品になっているところが、彼が才能豊かな所以ではなかろうか。。。

 ワシは、ワシを知る友人誰もが信じてくれないけど、神道を信仰している。宮崎作品、ジブリ作品は、神道や、日本の民俗風俗をベースにした世界観が案外多く、ワシはいつもその点をとても興味深く見ている。宮崎駿が神道を信仰しているとは思わないが、とても良く研究していることは確かだ。

 また、この映画はとても遊んでいる。一つ一つのシーンが、きちんと観客を楽しませることを意識した作りになっている。この当たりも、長年エンタテインメントの第一線で映画を作りつづけてきたジブリの底力、と言える。

 しかし、なんといっても最大の見物どころ (見所、ではなく見物どころ。ワシみたいに、素直に映画を楽しまないで批評家ぶった目で見るようなイヤな人が見物と思う要素) は、この作品に散りばめられた過去の作品の要素だろう。ワシの見立てただけでも「ルパン三世 カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「平成たぬき合戦ポンポコ(監督は高畑勲)」「耳をすませば」そして「もののけ姫」。きっと、もっとよく宮崎作品ジブリ作品を見ている人なら、もっともっと見つけ出せるだろう。

 ワシはこの映画が、宮崎駿の最高傑作!とは位置付けられないと思う。それでも、スタンダードに良質の作品だ。特にもののけ姫のように、最後に観客を突き放して終わる傾向の多い宮崎作品において、きちんと完結させているのは、観劇後の爽快感がその良さを証明している。

 いろいろ考えさせられることは多い。でも、何も考えなくても楽しめる。その両方のテイストが味わえるだけでも、この作品の評価は高くなるはずだ。まさに監督の言う「10代の女の子のための映画」であり、その子たちが大きくなって世の中を知った時、もう一度楽しめる映画なんだと思う。

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