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200倍返しコラム お題『携帯電話』


 携帯電話。

 不思議な響きである。電話を携帯していれば良いのだろうか。だとしたら家の電話の子機を持ち歩いても携帯電話なのだろうか。そうではない。携帯電話には携帯電話としてのジャンルがあり、だからこそ090〜、070〜といった特別な番号が付与されているはずなのだ。

 だが、そんな考えを打ち砕く人間がいた。

 僕の友人で、携帯電話をいつも家に置きっぱなしにする人がいる。一人暮しで、家に電話が無いので携帯電話を買ったが、外でもかかってくるのはうざったいので、家に置きっぱなしにしているのだ。

 電話をかけるほうとしては、ちょっとしたショックである。番号は携帯電話なのに、その置かれた場所は家。もともとあまり家に帰っていない人だからその不便さは尚更だ。いや、恐らく彼の持っているものが携帯電話でなければ、普通の家庭電話ならばこんな理不尽な思いはすまい。だが「どこでも繋がる」という意識で携帯電話を使っている側の人間からすれば、滅多にいない家でしか使われない携帯電話の意義について考えてしまうのも必定の理だろう。

 これはもう、携帯電話のアイデンティティの問題だ。

 というより、携帯電話の側からしても、これはかなりのショックであろう。せっかく買っていかれて、あちこちへ連れて行ってもらえると思ったら、男一人の汚い部屋から一歩も出ずに終えていく携帯電話人生。

 こうなると、携帯電話の拉致監禁と言っても過言ではない。

 鳥かごの鳥だって外を飛びたい、飼われる犬だって表を走りまわりたい、携帯電話だって外の空気を思いっきり吸って、雑踏の中で主人を呼び出すために着メロを鳴らして、たまには電車の中でバイブモードにするのを忘れられて恥ずかしい思いもしたいはずだ。

 でも、もしかしたら彼の携帯電話は幸せかも知れない。まずもって落とされたり水に濡れたりで壊れることは無いのだ。

 危険な自由か、飼われる幸せか。なんだか携帯電話とは程遠い結論になっている。

(以上、全文800文字÷テーマ「携帯電話」4文字で200倍返し!)


<2002年1月11日 ともさく>

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