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2000年狂乱(パニック) 〜FATAL FLAW〜


 1999年12月31日午後11時55分、僕は紅白も終わりどこかの寺の鐘が大写しになっているテレビを横にしながら、パソコンのディスプレイを眺めていた。ディスプレイに映っているのは、とあるサイトのホームページ。派手な壁紙の上には「2000年狂乱 NET LIVE」のタイトルが極彩色で躍っている。これから5分後に起こる世紀の大イベントの模様を、主催するサイトのホストコンピュータに届けられるネット情報をもとにインターネット上で逐一流していく、という、結構ブラックなページだ。

「用意されている最悪のシナリオ」と書かれたエリアをクリックしてみる。フライト中の航空機はレーダーから消失し、自分の居場所の分からない航空機の墜落、衝突事故が相次ぐ。病院ではカルテが消失し、急患の手術中にレーザーメスが患者を突き刺す。ビルでは報知器、探知機が誤作動し、警察や消防は大混乱を極める。そして、発射されてもいない「敵国」からのミサイル攻撃を「察知」した軍用コンピュータは、報復ミサイルを発射して誰の意思にもよらず第三次世界大戦が勃発する・・・・・・。

「これらはすべて、2000年1月1日0時0分に起こりうることである」と結ばれたこのページにも2000年狂乱のロゴが光っている。

 2000年狂乱。それはコンピュータエンジニアたちの苦心と、先見の明の不足から生まれたハイテクの黄昏。

 旧型のコンピュータは、今の汎用パーソナルコンピュータに比べても、はるかに容量が少なかった。当時のエンジニアたちは、いかにして無駄なデータを削るかを考えた。

 そこで思いついたことの一つが、コンピュータに内蔵される時計の年数表示を下二桁のみにする、つまり今、1999年なら「99年」とだけ表示する手法だ。

 彼らは、このことが後にどのような影響を与えるかを知っていた。だが彼らは、そのときまでに進歩した技術が、この危機を回避させると信じていた。

 しかし、その時がもう3分後に迫った現在、結局この危機を回避する手段を持たないまま、多くの旧型マシンが新しい年を迎えようとしている。今までとは違う新年だ。時計の数字が2000年1月1日午前0時0分を刻んだ瞬間、下二桁の年号しか認識できないコンピュータは1900年が来たと勘違いしてしまい、プログラムが混乱、暴走し、システムエラーが相次ぐ。

 用意されている最悪のシナリオのページに書かれている出来事は、その時に起きかねない極めつけの出来事ばかりだ。

 とはいえ、そこまで酷いことが現実に起こるかといえば、まずそんなことはないだろう。多少の混乱はあっても致命的な事態にはならない、という意見もある。その答えが出るまであと2分。

 そういえば、この放送局はカウントダウンなんて派手なことはやらないはずだ。僕はテレビのチャンネルを民放に変えた。画面では、人気の芸人がウダウダと喋っている。

 僕はディスプレイに目を戻した。あと1分。僕は「LIVE INFO」のページを開く。もうすぐ、サイトから来る狂乱の情報がオンラインでこのページにどんどんアップデートされるはずである

 横のテレビでは、さっきの芸人がカウントダウンを始めた。スタジオの声がそれに唱和する。

「9! 8! 7!」その時が迫ってきた。僕は唾を飲み込む。もうすぐ起こりうる惨事を、僕は待っている。テレビの声も、僕とは違う興奮に酔っている。

「3! 2! 1!」いよいよだ!

 その瞬間、僕の視界はブラックアウトした。何も見えないし、何も聞こえない。停電か? もしかしたら、これが2000年狂乱の影響?

 しかし、はやる心とは裏腹に、なぜか僕の意識は遠くなり始めた。急速に消えていく感覚の中で僕が最後に見たものは、暗黒の中に明滅する「System Error」のオレンジ色だった。


 キャ〜〜〜! 恥ずかしひ・・・・・・。リライトしたいけど・・・・・・いいや、そのままのっけちゃえ! この頃は、パソコンを触り始めて一年半くらいで、ネットのことなんて全然分かっていなくて、なんか、もっとちゃんと考証せいっ!って感じですな。てか、この主人公はクリスマス島にでも住んでるんかいな(わかるひとだけ笑ってください)。
 短編、てかショートショートか?もろ星進一チック。『ゼミ雑誌』なる大学のゼミナールで出版する本のために書いたもの。この頃はまだ誰もY2Kについて騒いでいなかったなぁ・・・・・・。いちお、書いた年代も考慮して読んでくれると嬉しいな〜。
 まあ、こんなもんでもワシの数少ない(←問題)完結した小説なんですわ。よろしかったら、感想などを聞かせてやっておくんなまし。
 ・・・・・・星進一と言うよりも筒井康隆か?

<2001年2月3日 ともさく>

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